うつ病、摂食障害、パニック障害、統合失調症…。…精神疾患。患者本人も支える人もつらいものです。
私も精神疾患の当事者で、長年症状に苦しんできました。そんな私が読んで励まされたのがこの本。
精神疾患に苦しむ人には、ぜひ読んでほしいです。この本を読み終えたときには、病気も悪くないかも、と思えるはずです。
- 題名:躁鬱大学 気分の波で悩んでいるのはあなただけではありません
- 著者:坂口恭平
- 出版:新潮社
- 発行:2021年4月30日
〈目次〉
躁鬱病とは
躁鬱病とは現在は双極性障害と呼ばれている、鬱病のひとつです。
気分が高揚して突拍子もない極端な行動を取ってしまう躁状態と、気分が落ち込んで何もできなくなる鬱状態を繰り返します。
あまりの気分の上下に、自分も周りも参ってしまうことがとても多い疾患です。
『神田橋語録』
著者の坂口さんは、長年躁鬱病に悩まされてきました。
そんな坂口さんが出会ったのが、ネットで見つけた『神田橋語録』。神田橋さんという精神科医が、躁鬱病について口述したのをまとめたものです。
そこには長年の坂口さんのモヤモヤを晴らす言葉が、たくさん書かれていました。
坂口さんはこの『神田橋語録』に励まされ、自身の躁鬱病との向き合い方を大きく前向きに変えていくことになるのでした。
本書はこの『神田橋語録』をもとに、坂口さんによる「躁鬱人」のための躁鬱との向き合い方が述べられています。
長年躁鬱病に悩まされてきた坂口さんの言葉だからこそ、刺さるものがあります。
『躁鬱大学』と命名されているだけのことはあり、講義調でとても読みやすいです。
躁鬱人は少数民族
まず、躁鬱病は病気ではなく、体質です。一生治らないのではなく、そもそも治そうとするものではないのです。
だから坂口さんは、躁鬱病患者のことを「躁鬱人」と呼びます。そして「躁鬱人」は少数民族と同じなのだと言います。
苦しいわけ
そもそも躁鬱人が苦しくなるのは、非躁鬱人になろうとするからです。
でもそもそも人種が違うから、なろうとしてもなれるものではない。
大切なのは非躁鬱人になることではなく、少数民族として自ら道を切り開くことです。
その道中では、「躁鬱」という体質や社会の常識に悩まされることになるでしょう。
そんな躁鬱人へのエールと処世術が、この『躁鬱大学』の講義なのです。
精神疾患がなかなか治らないと嘆くあなた。治そうとしなくてもよいのです。
精神疾患という「体質」ありきの人生を歩んでいきましょう。
多様性を受け入れよう
これは坂口さんからの、非躁鬱人に対するメッセージです。
少数民族である躁鬱人がマジョリティに合わせる必要がないことはわかりました。ではマジョリティである非躁鬱人は躁鬱人とどう付き合えばいいのか。
答えは簡単です。
外国人に接する時のように、躁鬱人に接すればよいのです。多様性を受け入れる心で、躁鬱人を受け入れるのです。
非躁鬱人と躁鬱人の間にある違いは、同化させるべきものではなく受け入れるべきものです。外国の文化を尊重するように、躁鬱人を尊重すればよいのです。
外国人と接するときは、「この人は外国人だから」と一定の距離を置きますよね。躁鬱人と接する時も同じです。踏み込みすぎないことが肝心なのです。
そうすれば非躁鬱人も躁鬱人も、お互いが気持ちよく過ごすことができるでしょう。
まとめ
『躁鬱大学』は躁鬱病に悩んでいた坂口さんが、うまく躁鬱と付き合っていく方法についてまとめた躁鬱人のための講義です。
私は躁鬱病ではありませんが、発達障害や鬱病などを患っており、世間的に見れば少数派に属します。マイノリティとしての視点から語られる坂口さんの講義は、そんな私にも勇気を与えてくれる内容でした。
これからは障害や病気を治そうとするのではなく「体質」として、上手に向き合っていく方法を模索していきます!