※この記事はネタバレを含みます。
この本はざっくり言うと、自分の運の悪さを悲観するアラフォー男性が、不思議な運転手と出会って人生を好転させていくお話。
この「運転手」が何者なのか、結局最後までわからずじまいなので考えてみました。
〈目次〉
書籍情報
- 題名:運転者 未来を変える過去からの使者
- 著者:喜多川泰
- 出版:ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発行:2019年3月30日
主要登場人物
岡田修一
完全歩合制の保険会社で働く40代の男性。「自分は運が悪い」と思っている。
運転手
仕事でも家庭でも行き詰まった修一の元に現れた、不思議なタクシー運転手。なぜか修一のことを詳しく知っている。
あらすじ
修一は焦っていた。
なんと20件分の保健の解約があり、完全歩合制なので来月からのお財布事情が厳しくなってしまったのだ。
焦る修一の元に、妻の優子から電話がかかってくる。今日は娘のことで、学校から話があると呼び出されていたのだった。
修一の娘の夢果は受験生なのに不登校であり、一日中部屋に閉じこもってスマホに夢中になっている。
ふと携帯を見ると、年老いた母からの不在着信。母は滅多に電話をよこさないので、何かあったに違いない。
嫌な予感を抱えながらも、娘の学校に行くために修一はタクシーに乗り込んだ。
このタクシーの運転手は、修一のことをなぜか知っていて――。
※ここからはネタバレになります。
「運転手」は何者なのか?
新規契約を取らなければと焦る修一の元に現れた、謎の運転手。彼はなぜか、修一の仕事のことや娘のことをぴたりと言い当てます。
不思議がる修一に彼は「自分は運がいいと思うか」と尋ねます。
大量の解約、娘のこと、母のこと、これからの自分…。修一は「運がいい人生なんて俺の人生とは無縁だ」と答えます。
そんな修一に、運転手は「そんな人の運を変えるのが仕事」で、これから修一を「人生の転機となる場所に連れて行く」と伝えます。
ですが彼はただ修一を目的地に連れて行くだけではなくて、道中で生き方の指針みたいなことを教えてくれるんですよね。
例えば「いつも上機嫌でいよう」とか「報われない努力なんてない」とか。
これだけでも謎多き運転手ですが、さらに不思議なのは修一ですら知らない祖父や父のことを知っているということ。
一体運転手とは何者なんでしょう?
私はこの本を読んで、恐らく運転手は「死んだご先祖さま」なのだろうと思いました。
というのも修一が最後に運転手と別れるシーンで、運転手が「親父」に見えたという描写があります。
意味もなく運転手が修一の父に似ているという描写はしないだろうし、これは大きなヒントではないでしょうか。
もう一つのポイントはこの本のサブタイトルが、「未来を変える過去からの使者」になっている点ですね。
本書には「未来を変える過去からの使者」に該当しそうな登場人物は「運転手」しかいません。なのでこれはそのまま「運転手」の正体のヒントになります。
修一の場合は運転手
人間、誰でも色々な形でご先祖さまに見守られています。修一のご先祖さまの場合はタクシーの「運転手」だった、ということではないかと思いました。
ですから他の人のご先祖さまは夢に出てくるのかもしれないし、手紙を書くのかもしれないですね。
どちらにしろ天から見守るご先祖さまは、人知を超えた存在なのでしょう。
あなたも普段生活していて、何だかわからないけど守られている気がする瞬間ってありませんか?
その延長線上にいるのが「運転手」というわけです。
ぜんぶ「運転手」まかせ?
本書に魅力を与えるのが「運転手」の存在だとするならば、微妙にしているのもまた「運転手」です。
だってこの物語って結局、ぜんぶ「運転手まかせ」じゃないですか?
修一の運命を変えたのも運転手、その父と娘を救ったのも運転手、妻の心を変えたのも運転手、挙げ句の果てに修一の上司である脇屋を支えていたのも運転手です。
主要人物全員が何かしらの形で「運転手」に出会って人生を好転させているわけです。
これってどうなんでしょう? 私は人任せ過ぎると思うのですが。あなたはどう感じましたか?
「運」の循環
ついでに言うと本書を通じてテーマになっているのが「運」ですが、これもモヤモヤポイントですね。
というのもこの本では「運は貯めるもの」であり「次世代に引き継がれていくもの」なんです。
今あなたが生きていることが、ご先祖さまが貯めておいてくれた運を使っている証。だからあなたは次世代のために運を貯めるような生き方をするべきだ、という。
つまり「運」は循環しているのです。
「運が悪い」と感じるのは運が十分に貯まっていないから(ご先祖さまが貯めてくれていないともいえる)。なので運を貯める努力をしなければなりません。
でも「報われない努力はない」のは「長い目で見たら」という条件付き。あなたが生きているうちにその成果は現れないだろうけど、次世代の「運」の足しになってるはずというわけ。
いや、自己犠牲が過ぎるわ。
こういう生き方をして、あなたは幸せになれると思いますか?
私は…無理です。
まとめ
本書は小説というより自己啓発に近い、生き方の指針を与えてくれる本です。
私は欲張りなので考え方に賛成できませんでしたが、あなたには希望を与えてくれる本なのかも。
ぜひ、みなさんの感想も聞かせてください。