帰宅すると走って迎えに来る愛犬、ソファに座るとそっと寄り添ってくる愛犬、エサをガツガツと食べる愛犬…。
愛犬の行動は、そのどれもが愛おしいもの。
でも避けては通れない道があります。それはいつかやってくる、歳をとった愛犬の「介護」。
しかし今西さんは言います。確かに介護はつらい。でもそれ以上に幸せにあふれている、と。
本書は17歳の愛犬「未来」と今西さんのささやかな毎日を綴った、幸せいっぱいのエッセイです。
〈目次〉
書籍情報
愛犬「未来」
今西さんは愛犬「未来」を、動物愛護センターから引き取りました。
虐待を受けていた柴犬の未来は、右目を負傷し、右後ろ足首切断、左後ろ脚も指から先がありませんでした。
しかし未来は今西さん夫婦のたっぷりの愛情のもと、すくすくと立派に育ちます。
そんな未来ですが、16歳頃から徐々に認知症の症状が出てきたのでした。
認知症と介護
未来の認知症の症状は、深夜にふらふら徘徊することに始まり、ワォーンワォーンと大声での夜鳴き、トイレの失敗など多岐にわたりました。
それと並行して、身体機能の衰えも目立ってきました。
健康体そのものだった未来に、「介護」が必要な時がやってきたのです。
つらい介護
愛犬であれ、人間であれ、介護はきれいごとでは終わらない。(パート3、84ページ)
小西さんは言います。
最初の頃、小西さんは慣れない未来の介護に、うつ状態になって体調を崩してしまいました。
そんな小西さんを救ってくれたのが、「犬友」でした。
「犬友」の支え
犬を飼っている人なら、誰しもが一度は他の飼い主さんと世間話をした経験があるでしょう。
「うちの子はね…」「ああ、わかるわかる! うちの子は…」
同じ愛犬家だからこそ、わかり合えることがあるというもの。犬同士がフンフンとにおいを嗅ぎ合って挨拶してる間の、飼い主同士の情報交換は楽しいものです。
介護をしていると、どうしても気分が落ち込んで、孤独になりがちです。
そんなときは今までと同じように散歩に出かけるべきです。犬友さんに会って話をすれば、自然と心も落ち着きます。
そして何より、犬友さんと話した後は「うちの子が一番」と、歳をとった愛犬がなんだか誇らしく、より愛しくなることでしょう。
小西さんは「犬友」に支えられ、つらい介護を乗り切ることができました。
旅立ち
2023年2月――。
未来は18歳の誕生日を目前に、大好きな小西さん夫婦の腕の中で息を引き取りました。
苦しむことなく、穏やかな最後でした。
最後の最後まで未来に尽くした小西さんは後悔することなく、あふれんばかりの「感謝」の気持ちで未来を見送りました。
色々大変なこともあったけれど、未来との毎日は何より幸せでいっぱいだったのでした。
感想
「犬友」の大切さ
本書を読んで感じたのは、「犬友」を持つことの大切さです。
介護は飼い主が心身共に愛犬を支えられるくらいに健康であることが大前提。それを支えるのが「犬友」なわけです。
介護はストレスがたまるもの。しかし人間の介護からもわかるように、介護者が何かと孤立しがちなのは想像できますよね。
でもそれじゃ身がもたない。だから歩けないならカートに乗せるなり抱っこするなりして、以前のように散歩をしましょうというのです。
そうすれば犬友さんに会って、愚痴のひとつやふたつでも言うことができますからね。
犬を飼う覚悟
人間世界では長寿化に伴って介護問題が悩みの種となっていますが、それは犬社会でも同じ。犬も長生きして、長期にわたる介護が必要とされる時代がやって来たのです。
小西さんの経験からもわかるように、犬の介護だから楽ということはない。むしろ違う種類の生き物なのだからわからないことだらけで大変です。
こんな時代だからこそ、飼い主にはより「犬を飼う覚悟」が求められているということです。
実は私は、犬の介護の経験があります。私の場合は老化ではなくて病気だったのですが、「今日できたことが明日はできない」状態で本当に大変でした。
小西さんも言っていますが、正直これは「きれいごと」では済まされません。相当な覚悟が必要です。
介護には、時間も、体力も、精神も持っていかれます。そのことまでしっかりと考えて、犬を飼うべきでしょう。
介護の覚悟ができていない人に、犬を飼う資格はありません。
幸せいっぱいの老犬介護
とはいえこの記事を読んでくださっているみなさんは、「ゆりかごから墓場まで」愛犬を世話する覚悟を持っている方たちだと思います。
愛犬を心から愛しているならば、そして自分の健康にも十分気をつかっていれば、老犬介護はつらいよりも絶対に幸せが勝るものになります。
私の家は現在新たに子犬を迎え、子育て真っ最中。毎日が賑やかで楽しいです。
愛犬の介護は忘れずに、でもそれ以上に今愛犬が分け与えてくれる幸せを、いっぱいに噛みしめて過ごしましょう!