実は私、大学は国際専攻なのですが、夏休みに数冊の本の読書課題が課されました。
その中の一冊がこの本、渡辺靖さんの『文化と外交』。
えー、もう結論からはっきり言います。
渡辺さんすみません、わけわかりませんでした!!
〈目次〉
書籍情報
- 題名:文化と外交 パブリック・ディプロマシーの時代
- 著者:渡辺靖
- 出版:中央公論新社
- 発行:2011年10月25日
なんでわけわからないのか
私政治関係の本って苦手なんですよね(国際学科だけど…笑)。
ぶっちゃけ、この本も息切れしながら読みました。
でも「意味わかんねぇ!!」で終わらせたくないんで、頑張って考察します…笑
うーん、とりあえず…なんでわけわかんなかったのか考えてみたいと思います!!笑
①専門用語が多い
これです、これ。
この本とにかく専門用語が多いんですよ。
パブリック・ディプロマシーとか、ユビキタス化とか、ソフト・パワーとかとかなんとか。
そして用語の説明がなかったり、あっても「いやこれわかってる前提で書いてますよね?」っていう感じの説明だったり。
国際関係学ビギナーの私には、ちょっと難しすぎました…。
②筆者の主張がはっきりしない(私にとっては)
本書を最初から最後まで頑張って読むと、とりあえず「今の時代、パブリック・ディプロマシーが重要になってきている」ということと、「日本のパブリック・ディプロマシーはダメダメ」ということが伝わってきます。
となると、筆者が言いたいことって「今の時代パブリック・ディプロマシーが大切なのに日本のパブリック・ディプロマシーはダメダメだから、他の国の成功例を見習ってちゃんとした政策としてやっていかないとダメですよ」ってなると思うんですよ。
ところがどっこい。渡辺さん、本書の最初の方でこんな風に言っています。
ごく直近の動向を俯瞰しただけでも、パブリック・ディプロマシーが積極的に展開されている実例には枚挙に暇がないことがわかる。国際比較を通して日本の現状を憂慮し、パブリック・ディプロマシーの一層の強化を唱えることは論じ方としては定石だろうが、それは必ずしも本書の目指すところではない。(序章、22ページ)
…え?
でも論の展開的に、「パブリック・ディプロマシーの歴史をたどってその重要性を論じる→日本のパブリック・ディプロマシーについて考察して、批判」だし、日本のパブリック・ディプロマシーをバッシングして改善を促そうとしてるんじゃないの?、となるわけです。
ここが本書のいちばんのわからないポイントですかね(少なくとも私にとっては)。
ということをふまえた上で、考察
…というわけですが、わからないなりに最後まで頑張って読んだことだし、頑張って考察していきたいと思います。
どうか最後までお付き合いください!
すごく頑張ったんで…!笑
用語の意味
まずは用語の意味からわかんないと何も始まらんわということで、私のわからなかった用語を私なりに定義していきたいと思います。
①パブリック・ディプロマシー
本書の最頻出用語、パブリック・ディプロマシー(そりゃそうだ)。
これがわからないと何も始まらない(当たり前だ)。
まず本書の表紙の内容紹介より以下抜粋。
いかに相手国の人びとの「心と精神を勝ち取るか」――。政府要人同士の伝統的外交と異なり、相手国世論に直接働きかけるパブリック・ディプロマシー。世界各地の反米主義へのアメリカの対抗策として急速に広まったこの文化戦略は、対外広報、人物交流、国際放送など多彩であり、…(以下略)…。(内容紹介、表紙)
ふむふむ。
「相手国の人びとの『心と精神を勝ち取る』」っていうフレーズ、本文でも何度か見ました。
これはポイントかもしれないですね。
でも、もう少し詳しく知りたいところです。
インターネットで検索すると、外務省がパブリック・ディプロマシーについて説明しているページが見つかりました!
ちょっと長いですが、以下抜粋しますね。
外務省が広報文化外交に力を入れる背景には、近年「パブリック・ディプロマシー」や「ソフト・パワー」の重要性が指摘されていることがあります。
「パブリック・ディプロマシー」とは、伝統的な政府対政府の外交とは異なり、広報や文化交流を通じて、民間とも連携しながら、外国の国民や世論に直接働きかける外交活動のことで、日本語では「広報文化外交」と訳されることが多い言葉です。
グローバル化の進展により、政府以外の多くの組織や個人が様々な形で外交に関与するようになり、政府として日本の外交政策やその背景にある考え方を自国民のみならず、各国の国民に説明し、理解を得る必要性が増してきています。こうしたことから、「パブリック・ディプロマシー」の考え方が注目されています。引用元:広報文化外交|外務省
うーん。
これらをふまえると、パブリック・ディプロマシーはこんな風に説明できそうです。
- 近年では国内政治への組織や個人の存在感が大きくなっただけではなく、グローバル化の進展によって国内政治に他国の組織や個人も影響を及ぼすようになった。パブリック・ディプロマシーは、そんな外国の組織や個人に対して直接働きかける文化戦略である。
そしてこの辺りの関連用語が「ユビキタス化」です。
②ユビキタス化
本書では今の時代は「ユキビタス化」の時代にあるとして、その特徴として「在京特派員やブロガーなどを通じてすぐに海外に伝わってしまう」ことを挙げています。
インターネットで検索をかけると、「ユキビタス」というのはIT関連の言葉みたいですね。
「いつでもどこにでもある」という普遍性を意味する言葉のようです。
それをふまえると、本書における「ユビキタス化」とはこんな感じの意味ではないでしょうか。
- ユビキタス化=急速に発達したインターネット環境によって、ひとつの情報が瞬く間に全世界の人びとに伝わるようになったこと
③ニュー・パブリック・ディプロマシー
本書では従来のパブリック・ディプロマシーに対し、新しい傾向のパブリック・ディプロマシー、ニュー・パブリック・ディプロマシーというものが出てきます。
本書ではこんな説明がされています。
政府の直接的関与が強くなりすぎると(あるいはそう受け止められると)、かえってパブリック・ディプロマシーそのものの魅力や信頼性、正当性は損なわれてしまう。「ニュー・パブリック・ディプロマシー」の時代にあっては、尚更だ。(第Ⅱ章、86ページ)
つまり「ユビキタス化」の時代において、パブリック・ディプロマシーについてこのように言えるのではないでしょうか。
- ユビキタス化の進む現代では、政府があまりに直接的に働きかけると情報に不信感が生まれて魅力が損なわれかねない。現代のパブリック・ディプロマシーにおいては、政府には人びとを上から操作しようとするのではなく、あくまでも人民同士で自然に構成される文化的なネットワークを「支援」することが重要になってくる。これが「ニュー・パブリック・ディプロマシー」である。
④ソフト・パワー
はあ、疲れた。でも忘れるな、ソフト・パワー。
この言葉がわからないと、読んでいてなにがなんだかこんがらがってくることになります。
私は途中で出てきたこの言葉を、
「えっ、まあ、ソフトなパワーなんでしょ(適当)」
という感じで深く考えずに読み進めた結果、わけわかめになりました…笑
これを読んでいるあなた、ラッキーですよ!笑
これから私がソフト・パワーについて考えるんで(遅い)。
ソフト・パワーとは確かにソフトなパワーなんですが、何に対してソフトなのかというとハード・パワーに対してのソフトです。
じゃあハード・パワーとはなんなのかというと、『デジタル大辞泉』(出版:小学館、最新:2020年8月)によれば、
他国の内政・外交に影響をおよぼすことのできる軍事力・経済力のこと。軍隊を動員しての示威行動や侵攻、経済制裁や経済援助など。
だそうです。
これに対するソフト・パワーについて、外務省が丁寧に説明してくれていました。
パワーというからには、相手に対して影響を及ぼす力のこと。ソフト・パワーというのは、自分の望むことを相手にも望んでもらうようにする力のことです。大きな特徴は、軍事力や経済力で無理やり従わせるわけではない、ということ。自国の価値観や文化によって相手を魅了し、敬服させてしまう。味方につけることですね。
サンキュー外務省。
まとめると、ソフト・パワーとは、
- 実力行使を伴うハード・パワーに対して、自国の価値観や文化によって相手を魅了することで相手に望ましい行為をさせる力のこと
だと言えそうです。
ポイント
パブリック・ディプロマシーとソフト・パワー
これ、私が盛大に勘違いしていたポイントなんですが、実はパブリック・ディプロマシーとソフト・パワーって違うんですよね。
パブリック・ディプロマシーの要領は、
あくまで政策目標の達成のために相手国の「心と精神を勝ち取る」ことにある。そのための情報活動(政策広報や国際報道)であり文化活動(文化外交や交流外交)(第Ⅲ章、149ページ)
そのため、
政策目標なくしてパブリック・ディプロマシーも存在し得ない(第Ⅳ章、190ページ)
のです。
つまりパブリック・ディプロマシーとは、政府が何かしらの明確な目的を持って行う「文化政策」なのであり、「力」を意味するソフト・パワーとは意味が異なります。
パブリック・ディプロマシーという政策を円滑にしてくれるのが、ソフト・パワーだと言えます。
日本のパブリック・ディプロマシー
パブリック・ディプロマシーとかソフト・パワーについてはわかったけど、じゃあ今までに日本は文化外交を行ってきたのか?
正解はイエスです。
しかし日本のパブリック・ディプロマシーはビミョーなのが現実。
そこが筆者が第Ⅳ章で主張しているところですね。
ではなにがビミョーなのか。
それは、私と同じです!爆笑
何が言いたいのかというと、パブリック・ディプロマシーとソフト・パワーを混同しているってことです。
クールジャパン戦略
「クールジャパン戦略」って知ってますか?
恥ずかしながら、私はこの本を読んで初めて知りました(これでも国際専攻)。
内閣府のサイトでは、こんな説明がなされています。
◎クールジャパンとは、世界から「クール(かっこいい)」と捉えられる(その可能性のあるものを含む)日本の「魅力」。
◎「食」「アニメ」「ポップカルチャー」などに限らず、世界の関心の変化を反映して無限に拡大していく可能性を秘め、様々な分野が対象となり得る。
◎世界の「共感」を得ることを通じ、日本のブランド力を高めるとともに、日本への愛情を有する外国人(日本ファン)を増やすことで、日本のソフトパワーを強化する。
要するに、
日本の国力を高めたいけれど、今の時代ハード・パワーじゃなくてソフト・パワーだよね。じゃあどうすればって考えた結果、世界的に注目を集めつつある「日本文化」を発信していくことにしました!
ってことですよね。
でもちょっと待て。
パブリック・ディプロマシーとソフト・パワーって、そもそも違くないかい…?
はい、そこなんです。
つまり「そこにあったから」日本文化を発信しているのであり、「日本のパブリック・ディプロマシーは政策目標があやふや」なのです。
だからなんか上手くいかないんじゃないの、と筆者は主張しているわけです。
じゃあ日本はどうすれば?
本書で解決策として挙げられているのは、「パブリック・ディプロマシーを行う上での政策目標を明確に定めて、それに応じた文化を利用していきましょう」ということです(私はそう受け取りました)。
また、パブリック・ディプロマシーは「文化」だけに限った話ではありません。
「対外広報」「人物交流」「国際放送」、そして「支援」。
様々な形があり得ます。
私が思うに、「支援」がいちばん現実的じゃないですか?
日本は戦後、発展途上国に対してたくさんの対外資金援助をしてきました。
「日本のおかげで井戸ができました!」とか、「日本のおかげで橋ができました!」とか、そういうのってけっこう多いわけです。
私たちって東日本大震災のとき、いち早く駆けつけて援助活動や支援活動を行ってくれた米軍に、悪い感情なんて抱きませんでしたよね?
相手国の世論に直接訴えかけるのがパブリック・ディプロマシーの主旨であるならば、日本が多くの実績を積み重ねてきたもので、感情に直接訴えかける「支援」って、いちばん現実的だと思うのです。
まとめ
今回、あまりにも内容がわからなかったため、まずは用語から噛み砕いて考察を深めてみました。
今ここまで記事を書いてみて、なんか少しはわかったようなわからないような…笑
この本を読んだことある方は、この本の言いたいことわかりましたか?
読んだことがない方は、1度読んでみてほしいです。
そしてこの本を読んでちゃんと理解できた方、ぜひ私に解説をお願いします!笑
参考文献
・ユビキタスとは - 意味をわかりやすく - IT用語辞典 e-Words
アクセス日:2023年7月23日
・ユビキタスとは?意味・定義 | ITトレンド用語 | NTTコミュニケーションズ
アクセス日:2023年7月23日
アクセス日:2023年7月23日